馬を褒める

当然ですが、馬は人間を乗せたくて乗せているわけではありません。
そのため、どれだけ思い通りに乗れなかったとしても、乗せていただいた馬に対して感謝を伝える必要があります。
厩舎の掃除やエサ、馬体の手入れももちろん馬にとっての報酬ですが、直接的なコミュニケーションによって馬を褒める方法があります。
愛撫

わかりやすく馬を褒める方法として、馬の首を軽く叩くという方法があります。
これを馬の世界では「愛撫」とよびます。
方法は、馬の首を軽くポンポンと叩くだけです。
馬体の手入れにおいても同じことが言えますが、触る力が強すぎると馬は苦痛を感じます。
馬に伝わることが重要ですので、なるべくわかりやすく伝えることを意識してください。
愛撫のタイミング
愛撫をするタイミングは、人によってさまざまですが、絶対的なルールとして、下馬の前はかならずしましょう。
他にも、レッスン終わりに手綱を伸ばしたときや、難しい運動を求めてうまくいった後にもするといいですね。
しかし、どんなときでも愛撫をしていいというわけではありません!
たとえば、それなりに経験のある馬が、ただ前に常歩を開始しただけで愛撫をしてしまうと、「こんな程度でいいんだ」と馬が思ってしまいます。
他にも、馬に緊張感が必要な場面でしてしまうと、馬の気が抜けてしまいます。
このように、タイミングを間違えると、今後に影響する場合があります。
では、馬が人間の指示を汲み取り、行動に移したとき、「正しいよ」と伝える手段はないのでしょうか?
譲る

ほとんどの初心者の方が、馬に「間違っているよ」と伝えることができますが、「正しいよ」と伝えられる人はなかなかいません。
馬に対して「指示をする」ということは、「変化を求めている」ということです。
つまり、「正しいよ」と伝えなければ、いつまでも馬は変化を求められていると考えてしまいます。
正しいことは正しい、間違っていることは間違っている、と評価を明確にすることで、馬が「自分は何をすればよいか」を理解することができます。
この「正しいよ」と伝える行為を、愛撫のように一言であらわすのは難しいですが、ここでは「譲る」という表現を使わさせていただきます。
譲る方法
では、実際に譲る方法です。
「譲り」には、愛撫のように明確な方法が決まっているわけではなく、場面によっても変わってきます。
しかし、どんな譲り方でも、共通していることは「少し楽にする」ということです。
例えば、あなたが手綱を引き、馬を止めたとします。
馬が止まると、手綱の引きをやめますよね。
これはあなたが無意識にやっている譲りのひとつです。
馬目線になってみると、「ハミが引っ張られてるから苦しい、止まろう、ハミが楽になった、止まって正しかったんだ」と考えているわけです。
騎手としては、ただもう手綱を引っ張る必要がなくなったから手綱を緩めたのかもしれませんが、馬に「正しいよ」と伝えられているわけです。
これは、停止だけでなく、あらゆる動作にも応用ができます。
速歩から常歩に移行したとき、引いた手綱を緩めることもできます。
手綱だけではありません。
速歩発進で少し強く使った脚を弱くするのもまた「譲り」です。
馬の重心を後躯にもってくるために使った騎座の扶助を少し楽にするのもそうです。
どんな譲りにおいても「少し楽に」がポイントです!
正しいことをしたときに譲ることによって、「こうすれば楽にしてくれる」と馬が覚え、次第に「良い動き」を理解するようになってくるのです。
譲るときの注意点
しかし、楽にしすぎるのはNGです!
今度はそれが別の扶助になってしまうからです。
経験豊富な騎手は、手綱をかけている薬指の握り具合で調整をしたりもします。
あくまで「少し楽に」を意識しましょう。
上達において「譲り」を意識するのとしないのでは大きな差が生まれます。
今後の騎乗で意識してみてください!
まとめ
- 馬の首を軽く叩く愛撫
- 「正しいよ」と伝えるための譲り